カテゴリ:翻訳( 4 )

皇帝は意外と働き者

中国の皇帝と官僚の関係を研究する論文を翻訳している最中、秋篠宮紀子さまが男の子を生まれたニュースがあった。おめでとうございます。

二本の論文はそれぞれ唐と宋の話だが、どちらを読んでも、皇帝が早起きであることがわかる。もちろん、官僚たちも付き合わなければならない。

唐代長安の場合、科挙試験に受かり、上京した官僚たちが好きな場所は、皇帝の御所から馬で30分ほどの距離がある。両者をつなげる大通りは、未明、官僚たちの蝋燭が星座のように明るい線をなしていたそうだ。

そして宋代皇帝の一日:

①皇帝は夜が明ける二時間ほど前に起床。
②まず前殿視朝(官僚との会議)が行われる。
③八時頃になると、食事を取り、衣服を着替え後殿視朝の場に向かう。たぶん重要な事項とか個別の官僚と会うとか。午後10時頃を目処に受けるほか、書籍の閲覧、或いは上奏に目を通し、午前十二時頃まで。
④午後は、経筵官という先生を招いて、儒学や歴史などを勉強。
⑤夜になると、個別の官僚を呼んで政務を尋ねる。

働き者の上に、朝が早すぎ。

朝に弱いぼくは、中国で大学院の先生から聞いた話が気に入っている。「デカルトは朝に弱い人で、デンマーク王室に招聘されたとき、毎日早起きを強制され、その上寒かったし、とうとう倒れて病死した」そうだ。

あ、王朝は違っても、皇帝も大変だけど、それに付き合う大臣たちはもっと大変だ。
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by nschinese | 2006-09-07 11:58 | 翻訳

訳文チェック

最近、ある翻訳の仕事を納品し、たまたまの機会でチェックしてもらった後の原稿を見た。

あれ、なんで誤字があった?と不安に思った。自分の訳文を出してチェックしたら、なんと誤字は、全部「直された」部分にあった!

たとえば、私が「值得自豪」と書いたが、「引以自毫」と直された。「毫」は誤字。
(意味は同じで、私の方が控えめだったかな)

後は、チェックする方の誤訳かな?
(1)、「○○産業に関連し」。
私は、「与。。。行业合作」と書いたが、「与。。。行业有关联」とされた。

(2)「次々に設備を整えていきました」。
私は、「不断充实了设备」と書いたが、「陆续的整备了设备」とされた。
「的」は誤字で、「地」に直すべき。
「整える」は日本語だったら「整備」になるが、中国語になると「整备」と言わないよね。

(3)会社の理念は、「人が主役」
これは、翻訳しにくもので、私は「以人为本」とした。この言葉は、現在中国政府が提唱している精神なので、自分も大変「引以自豪」だったが、「以人材为资本」と直された。

もし私が「人材」なら、「資本」と思われると、嫌だな。(笑)


また、長文を間違って直したところもあった。

一々指摘すると、「気分が損なわれた」と誤解されるし、時間の無駄にもなる。チェックによって生じたミスは、どうしたらよいか、悩みますね。
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by nschinese | 2006-06-06 11:47 | 翻訳

字幕あらさがし

 場所は「東京都写真美術館」、ビルに入ったら、女性二人がすぐに立ち上がって案内してくれた。
 さすがに「ワォ アイ ニーを見たい」と口から言えなかった。
 「あの、今日の映画を見たいですが」と私が。
 「あ、ワォ アイ ニーですね。こちらに……」。
 中国語と違うイントネーションでまじめに言われて、笑いたくなった。(失礼でした。)

 映画は大変よかった。
 というか、最初から暗い、重い、喧嘩ばかり、映画館に人が少ないと知っているし、原作王朔の小説はよく読んでいたから、見たかった。

 私の映画を見るクセは、この映画はなにを言いたかったのをみたい。
 中国映画って、都市生活の話が元々少ないし、自分の生活をどう考えているメッセージが含まれている映画がもっと少ない。だから、この映画をとても楽しみにしている。

 なんでずっと喧嘩するの、外国人にはわかりにくい映画だと思う。
 でも、たくさんのことを考えさせられた。

 
 今回は、まじめに字幕をよく読んだ。ミスは、10数個発見した。それに個致命的なミス。

 たとえば、結婚してからはじめての喧嘩シーンで、最初は、男の人が女の人にべたべたしないでと言った。
 その後、ちょっとのことで女の人がキレッちゃって、人の前で大声を出した。
 家に帰ってから、男の人が、「人の前で 耍性子 するのが大嫌い」と言ったが。
 この「耍性子」の意味は、「わがまま」、「キレる」だけど、字幕は、「人の前でべたべたするのが大嫌い」になった。
 その後、「私は警察に捕まえられるところだった」と男の人が言った。つまりあなたと喧嘩したせいで。
 ところが字幕には、「私は痴漢で警察に捕まえられるところだった」になった。つまりあなたとべたべたするから。

 なぜそれが致命的だというと、じつは、女の人がわがまま(それも理由があるけどね)で、男が人の前でメンツがつぶられちゃったので、喧嘩になったが。字幕だけ見てると、男の人が結婚してから、愛情表現がいやだということになった。

 だから、チラシには、「夫はその思いを裏切るかのように冷めた態度で、やがて「愛してる」とさえも言わなくなる」と書いた。

 その後も、似ているミスがある。
 離婚しようと言ったら、女の人が「私も努力したのよ、映画を見に行くように、コンサートにいくように」。男性は「そういうことじゃないよ」。
 そして女の人が「じゃ、「思想上」足りない?」。男の人は、「それは十分すぎた」と答えた。「思想上」って翻訳しにくいよね。
 ここで字幕には「思いやりが足りない」と書いた。じつは、「コミュニケーションが足りない?」の方がいいと思う。
 この映画の主題はここにある。男の人から見れば、この思想上の要求(つまり、男の人がなにを考えているのを知りたい、コントロールしたい、表現して欲しいなどなど)が十分すぎた、しつこかった。

 結局、字幕は一種の思い込みの下で作られたような気がする。

 予算のこともあるだろが、日本人が翻訳してから、中国人に一遍映画を見てもらえば、すぐわかる。
 一日で終わるので、数万円で済むはずのにね。

 ふだんは、字幕どうでもいいと思っていたが、今回は喧嘩のメインの映画で、致命的なミスがあると、喧嘩の論理がわからなくなる。
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by nschinese | 2006-03-30 15:15 | 翻訳

推敲するのは、だれのため?

 言葉をめしの種にするぼくですが、妻(日本人)に理屈っぽいと言われています。言葉の違いとか、どうでもいいことなのに理屈をこねるそうです。(中国語の表現は、钻牛角尖。牛の角の先っぽに入り込む。)言われると、反省します。

 たしかに言葉にこだわると、文字通りに理屈っぽいの人になります。

 たとえば、映画の字幕を見ると、だいたい文句言いたくなります。とくに中国語の四字熟語とかをうまく訳せるのが珍しくないのです。しょうがないといえば、しょうがないです。ただでさえ、中国語を日本語に訳すと字数が長くなるし、早く口にしゃべられると、字幕に収めきれないのは当たり前のことです。どこかで妥協しなければなりません。
 
 それに、両方の言葉をわかって、字幕をチェックする人って、滅多にないし、そういうチェックする人は、暇人か、あら捜しの気持に違いないのです。画面、音楽より、字幕ってどうでもいいことじゃありませんか。どうでもいいことに理屈をこねるのは、理屈っぽいです。

 しかし、それにしても、表現、語順に推敲し、吟味することをやめられません。このやめられないことの意味はどこにありますか? そのような自覚がないと、推敲の境界線をどこに置くかを常に迷うのではありませんか。

 まず、文章の意味、話の理屈、話の持ち運び方を正確に訳しなければなりません。平凡な訳でもいいから、それをしっかりと掴まなければなりません。その上、いい表現を探します。

 いい表現を探すことは、頼む側のためでもあるが、半分は自分のためです。

 たとえば、大工さんが物を作るとき、自分なりのこだわりを持っています。この角は、四角じゃだめで曲線でなければならない、そのこだわりを理解できるお客だって、多くはないですよね。みんなは全体的なイメージしかみません。
 
 また料理屋さんで、料理を盛るときも同じです。おそらくお客以上に盛り方に気を遣うのでしょう。同じ料理の仕事をする客、または主婦の客は感心するかもしれません。普通客は、あ、きれいだねと一言で終わります。

 一つの角、海老の置く場所、こういった細かいところを人に褒めてもらうのを期待してはいけません。それよりも、半分は自分の遊びだと意識した方がよいかもしれません。

 所詮半分は、自分の遊びだから、この遊びによって文章の理屈を害してもいけません。危ない遊びよりも、平凡の訳がいい場合もあります。过犹不及(過ぎたるはなお及ばざるがごとし) なんでもやりすぎるとよくないですね。

 教えることからも、似ている心得がありませす。どこかの本で読んだのを忘れましたが、「先生が面白がるところは、だいたい学生にとって退屈なところです」っていう名言があります。自分の座右の銘にしたいですね。

 業界が違っても、どこも同じでしょう。

 最後、妻の名誉のために言いますが、わからない日本語を聞くときに、必ず教えてもらえます。この間、翻訳に江戸時代の候文が何ヶ所出ました。なんと岳父(妻の父)まで一緒に調べてくれました。最後、彼らにどうしてもわからない箇所があって、じつは中国語の地名(古称)でした。お願いする前に言っとけばよかったのに、申し訳なかったのです。
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by nschinese | 2006-03-14 12:02 | 翻訳